ジョージ・フロイドの死
また、起こりましたね。
この手の事件。ここ数日はアメリカ中がざわざわしています。
いい加減にして、と本当に問題多いアメリカの核心を見る気分です。
日本でも報道されてるとは思いますが、まだまだアメリカほど知れ渡っていないので、アメリカ在住としては是非、アメリカの核となる人種差別について、知って欲しいと思ったので、記事を書くことにしました。
それにこういう時には、能天気にも他の記事をアップできないってほど、メモリアルデイウィークが開けたと思ったら、アメリカでは、#JustinceForGeorgeFloyd のタグがソーシャルミディアでは出回っています。
インスタグラムのタグ投稿はこちら
こういう事件が起こるたびに暴動が怒り、もう二度と起こらないようにしよう、と社会が硬く誓った(ように見える)のにも関わらず、いつもまた白人警官により黒人が残酷な扱いを受けて結果的に死んでしまう(殺された)、という事件は起こります。
ジョージ・フロイドさんの死についてはウィキペディアにすでにページが上がっていました。
日本語でもニュースになっているものがありました。
ロサンゼルス暴動
私がアメリカに移住してきたのは1992年の5月なのですが、直前に起きたロサンゼルスの暴動で、その時本当にアメリカに行っていいのか、正直なところ多少の不安がありました。
私が行ったのはニューヨークでしたが、その数年前にスパイク・リー監督の「Do the Right Thing」という映画が話題にもなっていたし、
(平和な日本から暴動がしょっちゅう起きる)アメリカへ行くなんて、大丈夫?
と友人や家族からも心配されたりして。
1992年の暴動は前の年に起きたロドニー・キング事件が発端となっているように思われましたが、いろいろな人種が多く住んでいたロサンゼルスでは、さらにアジア系(韓国系)民族と黒人の摩擦なども起こるようになって、とうとう街全体の暴動となった、という感じだったと記憶しています。
今までの事件
約30年前のロス暴動以来、白人警官に殺された黒人男性は今回が初めてではありません。
ついこの間(昨年)は2014年に起こったエリック・ガーナーさんを窒息死させた白人警官を解雇したというニュースがあったばかりです。
2016年には、ミネアポリスで同じような事件が起きました。これはまだまだ記憶に新しいですよね。
何の罪もないと思われる黒人男性がガールフレンドと子どもの目の前で、殺されたんですよ。その数ヶ月前にも、違う場所だったと思いますが、同じような事件は起こっています。
ミネアポリスの事件は、被害者のガールフレンドに撮影された動画がFacebookでライブストリーミングされとてもショッキングでしたよね。後部座席にいたという子どもの泣き声も聞こえてきて、胸がえぐられる思いがしたこと覚えています。
ミュージシャンのトム・モレロや、ビヨンセ、そして当時の大統領だったオバマ氏などの著名人が次々と怒りをあらわにしました。
上の記事のリンク内に貼られていたFacebookの動画は現在は削除されているようなので、改めてこちらにも貼っておきます(*注意:出血シーンがあります)。
全米で広がる抗議やデモ
東京にいる長男からは、
「アメリカではコロナでまだまだ外出禁止令が解けてないのに、みんななんで抗議のデモしたりしているの?」
と電話がありました。
確かにそうですよね。
10人以上、集まってはいけないなずなのに。
しかし、コロナだろうがそうでなかろうが、人生には絶対に他にもやることがあるのです。もちろん、命よりも大切なものはないので、自分の命を危険に晒すようなことはしてはいけないのですが、コロナ=死ぬというわけではないし、今回の一連の抗議は、いてもたってもいられなかった、という人たちが多いと思います。
どちらかというとコロナに怯えていて家にずっと引きこもっていた長男には
「コロナで行動を制限するのはしょうがないけれど、思考までもが狭まるようではダメ」
と言いました。
コロナであろうとなかろうと、正義を主張しないといけない時はあるわけです。
人間は何のために生きているのか?
これは私たちアジア人にも言えることで、白人男性(ワスプ=イギリスからの移民で英語の White Anglo-Saxon Protestantt の頭文字のこと)がコントロールするアメリカ社会で私たちアジア人(そして私の場合は女性でありシングルマザーという弱者・マイノリティーです)の役割は何か?
ということをアメリカにいると常に背中合わせに感じているようにも思います。
ジョージに正義を
私がちょっと引っかかるのは、今回のケースは、フロイド氏は犯罪を犯していたかもしれない人だったこと。元々、逮捕されていたわけですからね。
コンビニのようなお店で偽札を遣った容疑で事情聴取されていたのだそうです。最も、武器も所持しておらず、素直に警察の対応に応答していた、とのことでしたが。
一般的に警察は悪人だと思われる人たちには残酷な態度を示しますよね。日本のドラマとかでも犯罪者に対しては、すごい暴力的な尋問をしたりして、それって絶対に間違っている、と思います。
権力を利用してどういう相手でも特に弱い立場にいる人を押さえつけるのって、絶対に好きじゃないですから。
明らかに職権を利用して今回のように、必要以上に取締りを受けている人に苦しみを与えたり、それが元で死に追い込んでしまったりすることは言語道断です。
もちろん、警察は社会の風紀を正す人たちであるわけだから、それを乱すたちに対しては厳しく罰を与えないと威厳が保たれないというのはわかります。
でもね、やっぱり一線を超えてはいけないと思うし、どんな時でも、人間はみんなが平等なはず。平等であるべきなんだと思います。
ちょっと宗教がかってしまいますが
「人間が人間をさばくことなんて絶対にしてはいけないこと。そんな権利は誰にもない」
と言っている人がいました。そんなことができるのは「神」のみである、というのがその人の持論でしたが(その方は無宗教です)、私はそうだな、と妙に納得したんですね(私も無宗教です)。
個人的にはお世話になったり、助けてもらったりしている地元の警察官は、一人一人がとってもいい人たちばかりで、それはそれは有難い存在です(スピード違反で捕まる場合はすっごい嫌な感じで対応してくる警察官が多いですが)。
だから、今回のような事件が起こると
「やっぱり警官は嫌いだ」
とか
「これだから白人は酷い」
という声も多く出てくるわけで、それはまた別の差別を産んだり、元になっている差別が泥沼化して暗礁に乗り上げてしまう、という現象に陥ります。
アメリカの人種差別は本当に深刻なものがありますが、今回のような事件が起こると、ケースバイケースで、問題解決策を求めるよりも、これらをきっかけに人種差別という大きなテーマが一人歩きすることがある、ということも言えると思います。
そして気がついたら元になっている事件とは全く別方向へ行っていた、ということにもなりかねません。
命を無意味に奪われたジョージ・フロイドのご家族にはお悔やみを申し上げたいと思いますが、偽りのチェックを使おうとしたことはあくまでも悪いことであることは確かです。その辺は、しっかりと正して悪いことは悪い、と情報は流して欲しい、と思いました。
そして、この事件で注目されるべきことは、この出来事をストリートで目撃していた17歳の少女がいた、ということです。
彼女は警察官に脅されてもなんでも、彼女が目の当たりにしていた出来事を録画することをやめませんでした。
そして、その10分間に起きたことを全世界に公開するという勇気を持っていたわけで、この事件で「ヒーロー」がいるとしたら、私はその17歳の少女である、と思いますし、彼女を称えるアクションがもっとあってもいいな、と思いました。
全米で抗議が広がっている
ソーシャルミディアでは、ここ数日、あらゆる人たちがジョージ・フロイドさんに関する思いをアップしています。
特に目立っているのは「白人」たちの声ですね。それはとてもよいことではないのでしょうか。
こういう時には、意外にも高校生たちが多く反応してインスタなどでも、チェーンメールのようなものが送ってきたり、各ソーシャルミディアのストーリーなどにも、たくさん抗議動画や画像がアップされているのを見かけます。
そういうものを見ると、諦めずに社会を変えようとする前向きな若者がいると言うことで、安心するのですが、そこで終わっていてはいけません。
ソーシャルミディアでの著名人たちの声
マドンナは息子のトリビュートをアップ。彼はデイビッドという名前でよく彼女のインスタにも登場していますが、とっても才能がある人ですね!ちょっと前までサッカーのプロを目指すということで、家族でポルトガルへ移住していたはずです。今でもそうなのかな?まだ12歳ぐらいだと思いますが、いつの間にか、こんなに成長していますねー。ダンスも上手!マドンナの親バカぶりが見られます。
カイリー・ジェナーはマーチン・ルーサー・キングJr.の引用で。「これ以上の沈黙は裏切りになる」という意味の言葉です。アメリカでは日常的にも(仕事上でもプライベートの人間関係でも)「黙っている=真実を伝えようとしない=嘘」だということにもなりますからね。
デミー・ムーアはこんな写真をアップして、「黒人が一歩家の外に出るとどういう扱いを受けるかわからず、不安でいるなんて間違っています。55156に「FLOYD」とテキストして、ジョージ・フロイドの死に関わった全ての4人の警察官が逮捕されるように署名運動に参加してください」と訴えています。「XXX matter」というのはよく使う表現で、「XXXは大切です」という意味のものです。「Black Lives Matter」というのが一般的に使われますが「黒人の命だって大切」という意味。この投稿では「ジョージ・フロイドの命も大切だった」と訴えています。
オバマ元大統領はこの12歳のKeedron Bryant 君の歌を投稿して「コロナで変わった世の中で、早くノーマルな生活に戻りたいと思っている人が多いのは当たり前です。」としつつも、今まで肌の色の違いで扱いの差を受けていた人が何百万人もアメリカ社会にいたのというのはとても悲しく気が狂いそうになるようなノーマルだった、と言っています。「これが2020年の普通になってはいけない」と言っています。オバマ氏だけでなく、この少年の歌声は、他のソーシャルミディアでも溢れていました。
(他にも、ビヨンセ、ナオミ・キャンベル、ジャスティン・ビーバー、アリアナ・グランデ、カーディー・Bなどなど多くのセレブも発言していましたが、ストーリーなどのリンクができないので、ここには記しませんでした。)
署名運動や寄付したい方は
英語の記事ですが、一番下の方に
「寄付」「ミネアポリス下院議会」「署名」
の3つのカテゴリーで情報が載っています。アメリカでのことなので、日本からの参加はどうなるのかはわかりませんが、もしこの運動に参加して社会が変わるのに少しでも貢献したいと思う方がいたら、いい機会になると思います。
銃社会アメリカ
上の写真は、私が住んでいるコミュニティーではよく見かけるサインです。つまり「銃やナイフやまたは武器を持った人の立ち入りは禁止です」という意味のもの。
公共の建物の入り口に貼られている場合が多く、実はこれも賛否両論。
だってね、こういうのがある、というのは、銃を持った人がいるかもしれないということですからね。
脳裏にネガティブな思いを呼び起こすわけで、こういうサインを見ると、とっても嫌な気持ちになるんですよ。特に、子どもがいる時にはあまり見せたくないサインです。
本当に幸せで平和な社会では「銃」の存在さえ忘れていいですよね?でもアメリカは違うんです。
人種差別の問題もそうですが、無差別に起こる銃射撃事件もアメリカでは深刻です。今まで散々悲惨な事件は起きていました。その度に今度は私たちかも、という恐怖に脅かされているんです。
本当に問題多いアメリカですが、これを機に、なんとか変わって欲しいと祈るのみ。でも、祈るだけでは社会は変わりませんので、行動に移さないといけません(だから、私は記事を書句という行動を取りました。これは、署名や寄付以外に、今の私にできることだと思ってます)。
でもですね。このようにアメリカの根深い問題を書いていると悲観的になってしまうかもしれませんが、アメリカにはいいところもあります。
こういう時にみんなを引っ張って行動に出てくれる有志(リーダー)がたくさんいる、という部分だと思います。これはアメリカの救いになっていると思います。
アメリカに希望の光が失われないのは、少しずつでも絶対に世の中は変わると信じる力がまだまだあるからではないでしょうか?
灰色の雲の後ろには、必ず銀色に輝く裏地(シルバーライニング)がありますから。